先日102歳で亡くなった画家の野見山暁治さんに、
「四百字のデッサン」
という、こころ憎いタイトルのエッセイがある。
デッサンを続けるように文章も書き続けなさい
という含意でしょうか。
同書冒頭の藤田嗣治をめぐる回想を引用する。
「学校で絵を描いていたら誰かが、面白いぞ、と大声をあげながら教室へ入ってきた。
今なア、美術館に行って、お賽銭箱に十銭投げるとフジタツグジがお辞儀するぞ。
本当だった。
隣の美術館でやっている戦争美術展にさっそく行ってみたら、
アッツ島玉砕の大画面のわきに筆者の藤田嗣治が直立不動の姿勢でかしこまっていた。
当世規定の国民服で、水筒と防毒マスクを左右の肩から交互させて背負っている。
脚には革の長靴をはいて、ともかくも見事ないでたちだ。
もちろん頭は五分刈りだったが、これもまた似合っている。」
1943年9月上旬に、東京都美術館で開催された「国民総力決戦美術展」での光景を描いている。
当時、野見山さんは隣接する東京美術学校(東京藝術大学の前身)の画学生だった。
同月下旬には繰り上げ卒業させられて戦地へ赴く。
戦時下の緊迫感がこの僅か230字の文章から伝わってきます。
デッサンを続けるようにESの文章も磨きましょう!